環境コラム「ご存じですか?」
肉の消費がもたらす温暖化
大豆ミート
近所のスーパーで大豆ミートが棚に並ぶようになってから一年以上が経ちます。ハンバークなどの加工品だけでなく、ひき肉のように調理できるタイプもあります。
大豆ミートは、大豆を原料にし、肉のような味や食感を出した食品です。肉よりも低カロリー、低脂肪であり食物繊維も多く含まれていることから、健康志向の高まりと共に注目されていますが、それだけではありません。牛や豚などの畜産業における環境負荷の低減という点でも期待が高まっているからです。
牛のげっぷで温暖化
世界の農畜産活動による温室効果ガスの排出量(年間54億トン)は、全排出量の10~12%を占めています。このうちの3分の2を占めるのが、牛に代表される反すう家畜からのメタンの排出や、家畜の排せつ物の管理などの家畜生産に起因する排出です*1。
牛は咀嚼をして飲み込み胃に送った食べ物を、また口に戻し咀嚼して飲みこむ、この「反すう」を繰り返して食べ物を消化しています。胃の中で発生するメタンの多くは、げっぷとして大気中に放出されます。メタンはCO2の25倍の温室効果があることから、同量のCO2よりも大きな影響を与えるのです。
さらに、畜産には大量の水が使われていることや、飼料の生産のために森林が伐採されていることも問題視されています。
肉料理の提供なし
ビートルズのメンバーだったポール・マッカートニー氏が、肉を食べることによる環境への悪影響を懸念し、“ミートフリーマンデー”を提唱したのは2009年のこと。これは「肉を食べない日を週に1日作ろう」というもので、その後も先進国では肉食を控えようとする動きがあります。その一つが冒頭の大豆ミートの開発・普及です。
7月にパリで開催された世界パラ陸上世界選手権の会場では、肉を使った食事の提供なし、というニュースを聞きました。
日本においても、内閣府や東京都庁では気候変動対策の一環として、食堂で動物性食品を使わないメニュー(ベジメニュー)を定期的に提供する取組みが見られます*2。
わたしも、菜食者向けのレストランで大豆ミートを使ったハンバーグを食べたことがあります。大豆ミートだと知らなければ肉だと思って食べていたのではと思うほど、肉との違いは感じませんでした。こうした経験もあり、わたし自身は、今後大豆ミートのような代替肉を食べ、肉を食べる機会を減らすことについての抵抗は特にありません。
読者のみなさんはどのように感じますか?
*1:独立行政法人農畜産業振興機構ウェブサイト。人為的な温室効果ガス排出量に占める割合。
*2:都庁の食堂は一般の利用も可
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山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)