2023
1月

環境コラム「ご存じですか?」

気候変動の被害に特化した基金を創設 

文・山川文子

~COP27が開催~

COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が2022年11月6日から11月20日までの間、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されました。COP27で決定した主な内容を以下にまとめます。

被害に特化した基金

今回のCOP27では、気候変動による悪影響に伴う「損失と損害(ロス&ダメージ)」に対する資金支援が正式に議題(アジェンダ)に含まれていました。
近年、干ばつによる森林火災や豪雨・洪水などの気象災害が世界各地で起きています。最近では2022年6月以降にパキスタンで豪雨による大洪水が発生し、国土の3分の1が水没していると報じられました。
気象災害による被害は、特に発展途上国に大きな影響を与えています。これらの発展途上国はCOPにおいて30年間にわたって被害への補償の仕組みを創設することを求めてきましたが、議論は進まず今日に至っていました。今回のCOP27では、干ばつの被害があるアフリカの国であるエジプトが議長国となり、このテーマに焦点が当てられたのです。
議論は、資金支援をする側である先進国との間で意見の隔たりが多く難航しました。最終的に、特に脆弱な国の被害に対する資金支援のための基金を創設することが決定しました。気候変動による被害に特化した初の国際的な基金です。

排出削減策は進展なし

その一方で、温室効果ガスの排出削減策については前回のCOP26からの大きな進展は見られませんでした。
COP26で採択された「グラスゴー気候合意」には、石炭火力発電について「排出削減努力を講じていない石炭火力発電を段階的に減らす」ことが盛り込まれました。今回のCOP27ではさらに踏み込み、石炭に限らず「化石燃料」の段階的削減とすべきとの意見もありましたが、結果としてグラスゴー気候合意を踏襲することに留まりました。

COP27の開催前の10月27日には、UNEP(国連環境計画)が「各国が約束した温室効果ガス削減目標を達成しても今世紀末までに約2.5℃上昇する」との最新の報告書を公表しました。パリ協定における「1.5℃目標」とは隔たりがあり、世界で大きな社会変革が求められていることがわかります。
次回のCOP28は2023年11月30日から12月12日までの会期で、UAE(アラブ首長国連邦)で開催されます。

過去のコラム

2023
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4月 脱炭素社会の実現に向けて 省エネ法を大幅改正
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2月 寒くない家が当たり前に
1月 気候変動の被害に特化した基金を創設 
2022
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2021
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5月 高校教科書 ~日常生活から学ぶ~
4月 ゼロカーボンシティ宣言
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2月 この冬 電力需給がひっ迫
1月 SDGsとわたし達の暮らし
2020
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11月 集合住宅の断熱化
10月 不便の益
9月 宅配便の再配達
8月 石炭火力発電所

山川文子プロフィール

山川文子さんの写真

エナジーコンシャス 代表

執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)

[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)

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