2023
5月

環境コラム「ご存じですか?」

省エネデータの任意開示が始まる

文・山川文子

ESG投資が注目

ESG投資への注目が高まっています。ESG投資は、環境(Environment)・社会(Social)・企業統治(Governance)を重視した投資のことです。「環境」は気候変動や環境汚染、生物多様性などへの配慮、「社会」は労働環境の改善や多様性、地域への貢献、「企業統治」は不正防止、法令遵守、透明性の高い経営などが含まれます。
世界のESG投資の投資残高は2016年の22兆8390億ドルから2020年には35兆3010億ドルに増加しました。日本は欧米よりも規模が非常に小さいものの、2016年の4740億ドルから2020年には2兆8740億ドルと6倍に増加しています*1。
この状況を踏まえ、企業は統合報告書*2などにおいてESG投資に関わるデータを開示する例が増えています。

定期報告書

日本では、省エネ法において年間のエネルギー使用量が一定量以上の事業者(特定事業者)に対し、毎年定期報告書の提出を義務づけています。定期報告書には、前年のエネルギー使用量やエネルギー消費原単位などを記載します。エネルギー消費原単位は、エネルギー使用量を生産量や売上高などで割った値で、省エネの進捗程度を示す値として広く使われています。たとえば、1台の自動車を生産するのにどれだけのエネルギーを使ったかが示されます。この値が前年よりも小さければ、前年よりも省エネが進んだと判断できます。

任意開示が始まる

これまで経済産業省では、定期報告書に記載されていたデータを基にした業種別のエネルギー使用量やエネルギー消費原単位は公表していましたが、個々の企業のデータは公表していませんでした。
しかし、前記のような社会的な要請を踏まえ、投資家を含めた各方面への情報発信の一環として、定期報告書のデータを任意で開示する制度がスタートします。2023年度の試行運用、2024年度の本格運用に向け、任意開示制度への参画の意思を示す「開示宣言フォーム」への登録が呼びかけられています(2023年11月頃まで)。宣言へのインセンティブとして、省エネに関する補助金の審査において加点等が行われます。

開示されるデータは、法に基づき国に提出されたデータであり、投資家にとってはより信頼性が高いデータが入手できるというメリットがあります。
省エネの専門家ではない投資家に対しても、例えば「エネルギー消費原単位」がどのような意味を持つのかといった、データの読み方も一緒に提供することが必要でしょう。

*1:ニッセイ基礎研究所ウェブサイト
*2:財務情報と非財務情報をまとめた報告書

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8月 石炭火力発電所

山川文子プロフィール

山川文子さんの写真

エナジーコンシャス 代表

執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)

[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)

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