2023
2月

環境コラム「ご存じですか?」

寒くない家が当たり前に

文・山川文子

~2025年省エネ基準義務化~

室温が18℃未満は当たり前

先日、冬の住宅の室温について取り上げたテレビ番組を観ました。都道府県別の在宅時のリビングルームの平均室温は多くの都道府県で18℃を下回っている、北海道や新潟県などの寒冷地の方が暖かい、最も室温が低いのは香川県で13.1℃、などの調査結果*1が紹介されました。
18℃というのは、WHO(世界保健機関)が強く推奨する冬季の最低室温です。18℃を下回ると血管系の疾患などのリスクが高まると指摘しています。
室温の調査をした慶応義塾大学伊香賀俊治教授の「子供の頃から寒い家に暮らしていて、家の寒さに疑問を持っていない人がほとんど」とのコメントが印象的でした。

無断熱の住宅が4割

室温に影響するのが住宅の断熱性能です。少し古いデータですが、日本の既存住宅のうち39%は無断熱の住宅です*2。また37%の住宅は、国が1980年に定めた古い基準(昭和55年基準)にしか適合していません*2。すべての窓が1枚ガラスの住宅が55%を占める、という別の調査結果*3も、日本の住宅の断熱性能の低さを裏付けています。

義務化される省エネ基準

日本では、1980年に住宅の断熱性能を規定した「省エネ基準」が初めて定められ、その後数度の改定の度に基準は厳しくなりました。ただし強制力がない規定のため、前記のとおり「寒い住宅」が多数を占める状況にあります。
家庭部門の温室効果ガスの排出削減が一層必要とされる中、機器の性能向上や消費者の行動変容だけでは対策として不充分です。住宅の断熱性能の一層の向上を図るために、2025年から新築住宅の省エネ基準の遵守が義務化されます。つまり、省エネ基準に満たない住宅は建てることができなくなるのです。

光熱費の削減だけで考えない

断熱性能の高い住宅は、そうでない住宅よりも建築費用が多くかかります。光熱費の削減分だけでそのプラスの費用を回収するのは長期間を要します。しかし、断熱性能の低い住宅から高い住宅に転居したことでさまざまな疾患の有病率が減ったという調査結果もあります。光熱費と医療費の削減分を合わせて考えると、その期間は大きく短縮されます。これらの金額として現れる効果に加え「寒くない家」で活動的に暮らせることも考えると、そのメリットはより大きくなると感じます。

*1:全国約2190の戸建てを対象に調査を行った結果
*2:国土交通省資料(総務省「平成20年住宅・土地統計調査」をもとに推計)
*3:環境省「令和3年度 家庭部門のCO2排出実態統計調査(速報値)」
  「二重サッシ又は複層ガラスの窓」がない住宅の割合

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山川文子プロフィール

山川文子さんの写真

エナジーコンシャス 代表

執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)

[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)

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