環境コラム「ご存じですか?」
気候変動の被害に特化した基金を創設
~COP27が開催~
COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)が2022年11月6日から11月20日までの間、エジプトのシャルム・エル・シェイクで開催されました。COP27で決定した主な内容を以下にまとめます。
被害に特化した基金
今回のCOP27では、気候変動による悪影響に伴う「損失と損害(ロス&ダメージ)」に対する資金支援が正式に議題(アジェンダ)に含まれていました。
近年、干ばつによる森林火災や豪雨・洪水などの気象災害が世界各地で起きています。最近では2022年6月以降にパキスタンで豪雨による大洪水が発生し、国土の3分の1が水没していると報じられました。
気象災害による被害は、特に発展途上国に大きな影響を与えています。これらの発展途上国はCOPにおいて30年間にわたって被害への補償の仕組みを創設することを求めてきましたが、議論は進まず今日に至っていました。今回のCOP27では、干ばつの被害があるアフリカの国であるエジプトが議長国となり、このテーマに焦点が当てられたのです。
議論は、資金支援をする側である先進国との間で意見の隔たりが多く難航しました。最終的に、特に脆弱な国の被害に対する資金支援のための基金を創設することが決定しました。気候変動による被害に特化した初の国際的な基金です。
排出削減策は進展なし
その一方で、温室効果ガスの排出削減策については前回のCOP26からの大きな進展は見られませんでした。
COP26で採択された「グラスゴー気候合意」には、石炭火力発電について「排出削減努力を講じていない石炭火力発電を段階的に減らす」ことが盛り込まれました。今回のCOP27ではさらに踏み込み、石炭に限らず「化石燃料」の段階的削減とすべきとの意見もありましたが、結果としてグラスゴー気候合意を踏襲することに留まりました。
COP27の開催前の10月27日には、UNEP(国連環境計画)が「各国が約束した温室効果ガス削減目標を達成しても今世紀末までに約2.5℃上昇する」との最新の報告書を公表しました。パリ協定における「1.5℃目標」とは隔たりがあり、世界で大きな社会変革が求められていることがわかります。
次回のCOP28は2023年11月30日から12月12日までの会期で、UAE(アラブ首長国連邦)で開催されます。
過去のコラム
2023 | |
12月 | 最終回 |
11月 | 家電売り場に見る品揃えの変化 |
10月 | ご存知ですか?“デコ活” |
9月 | 地球沸騰化の時代に |
8月 | 肉の消費がもたらす温暖化 |
7月 | エアコンの自動制御で電力ひっ迫に貢献 |
6月 | 高効率給湯器への移行 |
5月 | 省エネデータの任意開示が始まる |
4月 | 脱炭素社会の実現に向けて 省エネ法を大幅改正 |
3月 | 節電プログラムに参加してみました |
2月 | 寒くない家が当たり前に |
1月 | 気候変動の被害に特化した基金を創設 |
2022 | |
12月 | 自分ごととしての脱炭素化 |
11月 | ラベルレスのペットボトル飲料 |
10月 | 東京都 新築住宅への太陽光発電設置を義務化 |
9月 | ホテルのエコ進行中 |
8月 | フードバンクを支援するには |
7月 | 量り売りで食品ロスを削減 |
6月 | 簡易なツール利用を行動のきっかけに |
5月 | 使い捨てプラスチック製品を減らす |
4月 | 「食べ残したら持ち帰る」が当たり前に |
3月 | 有機農業の普及 |
2月 | バレンタインデーはフェアトレードチョコを |
1月 | 電力・ガス会社の省エネ情報を採点 |
2021 | |
12月 | COP26が開催 ~「1.5℃目標」に向かって~ |
11月 | ファッションをサステナブルに |
10月 | 気候変動の最新報告書が公表される |
9月 | プラスチックを対象にした新しい法律 |
8月 | カーボンニュートラルに向けた取り組み |
7月 | 改正温対法 |
6月 | SDGsをもっと身近に 169のターゲットの日本語コピー |
5月 | 高校教科書 ~日常生活から学ぶ~ |
4月 | ゼロカーボンシティ宣言 |
3月 | 検針票のペーパーレス化 |
2月 | この冬 電力需給がひっ迫 |
1月 | SDGsとわたし達の暮らし |
2020 | |
12月 | 温室効果ガス 新たな目標 |
11月 | 集合住宅の断熱化 |
10月 | 不便の益 |
9月 | 宅配便の再配達 |
8月 | 石炭火力発電所 |
山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)