2022
10月

環境コラム「ご存じですか?」

東京都 新築住宅への太陽光発電設置を義務化

文・山川文子

大手住宅供給事業者が対象

脱炭素社会実現のための対策の一つとして、東京都は大手の住宅供給事業者に対し、新築住宅への太陽光発電設置を義務化する方針を発表しました。2025年4月の開始を目指しています。
設置義務があるのは、都内で一年間に供給する延床面積が2万平方メートル以上のハウスメーカーなどの住宅供給事業者で、約50社が対象となる見込みです。

すべての住宅ではない

狭小住宅や日当たりが悪い住宅など、太陽光発電が設置できない、設置が適さない住宅もあります。都の計画では、すべての住宅に設置を義務付けるのではなく、対象の事業者が供給する建物全体で設置基準の達成を求める仕組みになっています。
東京都の資料によると、都内に太陽光発電設備を設置できる施設は225万棟。この内、既に設置されているのはわずか4%(9.5万棟)とのことです。2050年には既築建築物の約半数(住宅は約7割)が今後新築される建物に置き換わると見込まれており、これらへの太陽光発電の設置を進めようというものです。

初期費用は10年程度で回収

消費者にとっては、住宅の価格が高くなるのではないかと気になります。
都では、太陽光発電設置に係る初期費用は10年間(現行の補助金制度を利用すると6年間)で回収でき、30年間で最大で159万円程度のメリットが得られると試算しています*。

都の「太陽光発電設置 解体新書 ~太陽光発電の“クエスチョン”をひも解く~」を見ると、上記の費用の他にも「ライフサイクルで考えると太陽光パネルは環境にやさしいのか?」「どのようなメンテナンスが必要か? 専門業者に頼むといくらくらいかかるか?」「太陽光パネルはリサイクルできるのか?」等、消費者や事業者が抱く質問・疑問に丁寧に答えています。この制度の導入への理解を得ようとする姿勢を感じます。
施行までに関係者との充分な意見交換がなされ、納得される制度が設計されることを期待します。

*東京都「太陽光発電設置 解体新書 ~太陽光発電の“クエスチョン”をひも解く~」
https://www.kankyo.metro.tokyo.lg.jp/climate/solar_portal/faq.files/factsheet.pdf
30年間の設備費用・パワーコンディショナーの交換費用の合計121万円程度に対し、売電収入等の合計が240万円程度。119万円程度のメリットが得られる。現行の補助金(設置費用に対し10万円/kW)を活用した場合、159万円程度のメリットが得られる。一定の条件の基で試算。

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山川文子プロフィール

山川文子さんの写真

エナジーコンシャス 代表

執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)

[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)

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