環境コラム「ご存じですか?」
COP26が開催 ~「1.5℃目標」に向かって~
10 月 31 日から 11 月 13 日の2週間に亘り、英国のグラスゴーにおいてCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)が開催されました。昨年はコロナ禍で開催されなかったことから、2年ぶりの開催です。COP26において採択された「グラスゴー気候合意」の主な内容を整理します。
1.5℃目標に
2015年に採択されたパリ協定では、「世界の平均気温の上昇を、産業革命前と比べて2℃よりも十分低くし、1.5℃に抑える努力をする」ことが世界共通の目標として定められました。しかし、その後、気候変動への影響は、2℃上昇の場合よりも1.5℃上昇の方がはるかに小さいという認識が高まったことから、合意文書では「1.5℃目標」の重要性を強調した内容となりました。
気温上昇を1.5℃に抑えるためには、世界の温室効果ガスの排出量を2030年までに2010年比で45%削減し、今世紀半ばまでに実質ゼロにする必要があります。しかし、COP26の直前に公表された国連の報告書では、各国が既に提出した削減目標を達成したとしても、2030年の排出量は2010年比で13.7%増加するとの推定もされる中、目標値の大幅な見直し(強化)の必要性が高まり、各国は2022年末までに目標値の再検討が要請されました。
石炭火力発電を段階的に減らす
石炭火力発電については、「排出削減努力を講じていない石炭火力発電を段階的に減らす」ことが合意文書に盛り込まれました。議長案である「段階的な廃止」は合意が得られず、表現が弱められ形になりました。
この他、先進国の途上国に対する年1000億ドルの資金支援を早急に達成するとともに、今後大幅に増額する必要があることや、CO2の排出枠を市場で取引する仕組みについての合意を得ました。この排出枠に関する詳細等が決定したことで、パリ協定のルールブック(実施指針)が完成しました。
いかにして達成するか
気候変動の影響が世界各地で見られる中、「1.5℃目標」が世界の共通認識として再確認され、発信されたことの意義は大きいと感じます。石炭火力は「削減」という表現であったとしても、脱却の方向性はより鮮明になったと感じます。
しかし、目標を高めただけで、より多くの排出量を削減できるわけではありません。各国がいかに目標を達成していくかが今後の課題です。合意文書では、2030年までの「重要な10年間」に行動を強化させる緊急性も明示されました。政府、企業、消費者それぞれの覚悟が問われ、行動変容が迫られる10年間です。
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山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)