環境コラム「ご存じですか?」
カーボンニュートラルに向けた取り組み
求められるサプライチェーン全体でのCO2削減
脱炭素社会の実現に向けた企業の取組みが本格化する中、先進的な企業を中心に、製品のサプライチェーン(供給網)全体でのカーボンニュートラルに向け、取引先に対してもCO2排出削減を求める傾向が高まっています。
トヨタ自動車の場合
2021年6月にトヨタ自動車は、2035年までに世界の自社工場のCO2排出量を実質ゼロにする方針を示しました。2050年だった従来の達成時期を大幅に早めたものです。さらに、主要1次取引先に対し、2021年のCO2排出量の削減目標として「前年比3%の削減」を要請。これは、2020年の目標(2%削減)よりも1%厳しい値です。
自動車の原材料や部品の調達から、製造、輸送、廃棄・リサイクルを含めたサプライチェーン全体でカーボンニュートラルを達成するための対策の一つです。
トヨタ自動車のように、取引先に対して定量的なCO2排出削減の目標設定はしていなくても、各取引先の排出量を把握し、削減の協力を求める企業は増えています。
アップルの場合
世界の動きの一例を挙げます。アップルは、自社の企業活動におけるカーボンニュートラルを既に実現する中で、2030年までにサプライチェーン全体でも達成すること、そのために、世界中の製造パートナー110社以上がアップル製品の製造に用いる電力すべてを再生可能エネルギーに変えていくことを発表しました。これにより、年間1500万トンのCO2排出量の削減につながるとのことです。
中小企業もCO2排出削減が必須に
トヨタ自動車やアップルの例からもわかるとおり、今後は中小企業にまでカーボンニュートラルに向けた取組みが必要とされていくことは明らかです。
CO2排出削減は、光熱費の削減はもちろんのこと、生産性の向上や、排出削減活動を通じた社内コミュニケーションの活性化など、副次的な効果も多くあります。積極的な活動がメディアで取り上げられたのを機に、知名度が上がり、新規取引につながった企業もあります。
取引先からの要請を規制として捉えるのではなく、それを前向きに捉えて、積極的な姿勢で取り組むことが成功の鍵と感じます。
過去のコラム
2023 | |
12月 | 最終回 |
11月 | 家電売り場に見る品揃えの変化 |
10月 | ご存知ですか?“デコ活” |
9月 | 地球沸騰化の時代に |
8月 | 肉の消費がもたらす温暖化 |
7月 | エアコンの自動制御で電力ひっ迫に貢献 |
6月 | 高効率給湯器への移行 |
5月 | 省エネデータの任意開示が始まる |
4月 | 脱炭素社会の実現に向けて 省エネ法を大幅改正 |
3月 | 節電プログラムに参加してみました |
2月 | 寒くない家が当たり前に |
1月 | 気候変動の被害に特化した基金を創設 |
2022 | |
12月 | 自分ごととしての脱炭素化 |
11月 | ラベルレスのペットボトル飲料 |
10月 | 東京都 新築住宅への太陽光発電設置を義務化 |
9月 | ホテルのエコ進行中 |
8月 | フードバンクを支援するには |
7月 | 量り売りで食品ロスを削減 |
6月 | 簡易なツール利用を行動のきっかけに |
5月 | 使い捨てプラスチック製品を減らす |
4月 | 「食べ残したら持ち帰る」が当たり前に |
3月 | 有機農業の普及 |
2月 | バレンタインデーはフェアトレードチョコを |
1月 | 電力・ガス会社の省エネ情報を採点 |
2021 | |
12月 | COP26が開催 ~「1.5℃目標」に向かって~ |
11月 | ファッションをサステナブルに |
10月 | 気候変動の最新報告書が公表される |
9月 | プラスチックを対象にした新しい法律 |
8月 | カーボンニュートラルに向けた取り組み |
7月 | 改正温対法 |
6月 | SDGsをもっと身近に 169のターゲットの日本語コピー |
5月 | 高校教科書 ~日常生活から学ぶ~ |
4月 | ゼロカーボンシティ宣言 |
3月 | 検針票のペーパーレス化 |
2月 | この冬 電力需給がひっ迫 |
1月 | SDGsとわたし達の暮らし |
2020 | |
12月 | 温室効果ガス 新たな目標 |
11月 | 集合住宅の断熱化 |
10月 | 不便の益 |
9月 | 宅配便の再配達 |
8月 | 石炭火力発電所 |
山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)