環境コラム「ご存じですか?」
改正温対法
「脱炭素社会の実現」を法的に位置づけ 改正温対法が成立
2020年10月の菅総理大臣の「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」との宣言によって、日本は脱炭素社会の実現に向かって大きく舵をきりました。この方針を踏まえ、2021年4月には、「2030年の温室効果ガス排出量を2013年比で46%削減する」という、新しい削減目標も設定されました。
基本理念に明記
このような中、温暖化対策の枠組みを定めた法律「地球温暖化対策推進法」(温対法)の改正法が5月26日に成立しました。
今回の大きな改正点は、「2050年までの脱炭素社会の実現」が法律の基本理念として明記されたことです。これは、長期的にこの方針が継続されることを意味しており、脱炭素社会に向けた投資や技術開発などが進むことが期待されています。
目標設定で実効性を高める
改正法では、都道府県が作成する温暖化対策の「実行計画」の中に、各施策の「目標」を記載することが追加されました。現在の実行計画において、たとえば、再エネ導入に係る目標を設定している都道府県は約3割しかありません。この計画は公表されますので、目標設定とその公表を通じて、施策の実効性を高めようとするものです。
市町村においては、環境配慮や地域貢献などの地域の方針に合った再エネ活用事業を市町村が認定し、関連する行政手続きを簡略化する制度が導入されます。
データのオープン化
さらに、企業の温室効果ガス排出量データをデジタル化し、オープンデータ化を進めるための仕組みも規定されました。
温対法では、一定量以上の温室効果ガスを排出する事業者に対し、毎年度、排出量を国に報告することを義務付けています。現在は、紙媒体による報告書の提出がほとんどであるため、提出から公表までに約2年を要していました。
そこで、電子システムによる提出を進め、公表までの期間を1年未満にするとのことです。また、従来の企業単位での排出量の公表から、事業所単位と細分化した排出量の公表へと変わります。
日本の温暖化対策の中核法である温対法の改正によって、企業や自治体の脱炭素化への取組みがどのように進むのか、注目したいと思います。
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山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)