環境コラム「ご存じですか?」
温室効果ガス 新たな目標
温室効果ガス「排出実質ゼロ」を目指す
所信表明演説で宣言
菅総理大臣は2020年10月26日の所信表明演説において、日本が「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする『脱炭素社会』の実現を目指す」ことを宣言しました。
「全体としてゼロ」というのは、温室効果ガスの排出量と森林などによる吸収量を均衡させることです。
政府は、2019年6月、パリ協定に基づく日本の長期戦略として「最終到達点としての『脱炭素社会』を掲げ、今世紀後半のできるだけ早期に実現することを目指すとともに、2050年までに80%の削減に取り組む」としていました。今回の宣言は、従来の目標をさらに引き上げたものです。
他国と同レベルの目標に
他国はどのような目標を掲げているでしょうか?
世界最大の排出国である中国は、2020年9月に「2060年までに排出実質ゼロを目指す」ことを表明、第2位の排出国である米国は、次期大統領の当選がほぼ確実となっているバイデン候補が、「2050年までに排出実質ゼロ」を公約に掲げています。また、2020年11月4日に離脱が確定したパリ協定に、大統領就任当日に復帰することを表明しています。
EUは、2050年までの排出実質ゼロを目標に掲げ、具体的な政策を展開しています。2020年10月に、EUの環境相会合において「欧州気候法案」が合意されました。これは、2050年の排出実質ゼロという目標に法的拘束力を持たせるものです。
既に121か国・1地域が、2050年までの排出実質ゼロに賛同する中、日本も今回の宣言により世界の動きに肩を並べたと言えます。
第6次エネルギー基本計画の議論始まる
資源エネルギー庁は、第6次エネルギー基本計画策定のための有識者による議論(総合資源エネルギー調査会基本政策分科会)を始めました。2050年の排出実質ゼロを実現するための課題を検証し、前回の第5次計画(2018年7月策定)における2030年のエネルギー需給の姿を見直します。
政府の審議会は、コロナ感染防止対策の一環として、従来あった傍聴席を設けず、オンラインでのライブ配信をするようになりました。終了後も視聴ができます。わたしたちがどのような社会を目指すのか、どのような議論が行われているかを知ることができる機会です。傍聴に行くほどではないが、オンラインであれば聞いてみようか、と思う人もいるのではないでしょうか。
2020年10月12日の第32回総合資源エネルギー調査会基本政策分科会の様子
https://www.youtube.com/watch?v=bLnI3svfUR0&feature=youtu.be
過去のコラム
2023 | |
12月 | 最終回 |
11月 | 家電売り場に見る品揃えの変化 |
10月 | ご存知ですか?“デコ活” |
9月 | 地球沸騰化の時代に |
8月 | 肉の消費がもたらす温暖化 |
7月 | エアコンの自動制御で電力ひっ迫に貢献 |
6月 | 高効率給湯器への移行 |
5月 | 省エネデータの任意開示が始まる |
4月 | 脱炭素社会の実現に向けて 省エネ法を大幅改正 |
3月 | 節電プログラムに参加してみました |
2月 | 寒くない家が当たり前に |
1月 | 気候変動の被害に特化した基金を創設 |
2022 | |
12月 | 自分ごととしての脱炭素化 |
11月 | ラベルレスのペットボトル飲料 |
10月 | 東京都 新築住宅への太陽光発電設置を義務化 |
9月 | ホテルのエコ進行中 |
8月 | フードバンクを支援するには |
7月 | 量り売りで食品ロスを削減 |
6月 | 簡易なツール利用を行動のきっかけに |
5月 | 使い捨てプラスチック製品を減らす |
4月 | 「食べ残したら持ち帰る」が当たり前に |
3月 | 有機農業の普及 |
2月 | バレンタインデーはフェアトレードチョコを |
1月 | 電力・ガス会社の省エネ情報を採点 |
2021 | |
12月 | COP26が開催 ~「1.5℃目標」に向かって~ |
11月 | ファッションをサステナブルに |
10月 | 気候変動の最新報告書が公表される |
9月 | プラスチックを対象にした新しい法律 |
8月 | カーボンニュートラルに向けた取り組み |
7月 | 改正温対法 |
6月 | SDGsをもっと身近に 169のターゲットの日本語コピー |
5月 | 高校教科書 ~日常生活から学ぶ~ |
4月 | ゼロカーボンシティ宣言 |
3月 | 検針票のペーパーレス化 |
2月 | この冬 電力需給がひっ迫 |
1月 | SDGsとわたし達の暮らし |
2020 | |
12月 | 温室効果ガス 新たな目標 |
11月 | 集合住宅の断熱化 |
10月 | 不便の益 |
9月 | 宅配便の再配達 |
8月 | 石炭火力発電所 |
山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)