環境コラム「ご存じですか?」
石炭火力発電所
効率の低い石炭火力発電所を廃止に
約100基が休廃止に
7月3日に経済産業大臣が、日本の効率の低い石炭火力発電所を2030年度までに段階的に休廃止する方針を表明しました。詳細は未定ですが、国内にある140基ある石炭火力発電の内、約100基が対象になる見込みです。
これは、現在世界の潮流である脱炭素社会の実現に向けた取り組みの一つです。エネルギー政策の基本的な方向性を示した「第5次エネルギー基本計画」(2018年改訂)にも、「非効率石炭のフェードアウトに取り組む」と記されています。
世界の状況
海外の状況を見てみると、欧州は廃止に向けた動きが進みます。英国は「2025年までに廃止の方針」、ドイツは「段階的に削減し2038年までに全廃の方針」、フランスは「2022年までに廃止の意向」です。米国は石炭火力を引き続き活用する方針ですが、発電電力量に占める石炭火力の割合は33%(2015年)から2030年には21%に減少する見込みです。
安定供給性や経済性に優れる
日本はエネルギー資源のほとんどすべてを輸入に頼る中、石炭はCO2を多く排出するものの、さまざまな地域から輸入をしており地政学的なリスクが少ないことや、安価であることから、エネルギー基本計画においても「重要なベースロード電源」として位置づけられています。
2018年度の総発電量のうちの32%が石炭火力によるもので、天然ガス火力(38%)に次いで大きな割合を占めます。
電力会社に与える影響
休廃止の対象は約100基と多く、特に石炭火力による発電が多い電力会社にとっては、経営、地域経済、雇用に与える影響が懸念され、安定供給が難しくなる可能性もあります。たとえば、総発電量に占める非効率石炭火力の発電量は、沖縄電力は約55%、北海道電力は約39%と高く、東北・北陸・中国電力はそれぞれ25%前後を占めています。
冒頭の経済産業大臣の方針表明を受け、7月13日には専門家会合が開催され、段階的な廃止に向けた具体的な検討が始まりました。今後も、休廃止を確かなものにするための規制的な措置と併せて、安定供給や早期の休廃止を進めるための誘導的な措置(インセンティブ)を検討します。2020年内に結果を取りまとめ、2021年に改訂するエネルギー基本計画に反映する予定です。
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山川文子プロフィール
エナジーコンシャス 代表
執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。
東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)
[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)