2020
10月

環境コラム「ご存じですか?」

不便の益

文・山川文子

不便だからよい

便利さと引きかえに失ったもの

スマートフォンの地図アプリを見ながら歩いている人をよく見かけます。迷わずに目的地に到着できますが、途中にあった素敵なカフェを見逃しているかもしれません。
本の通販サイトは、買いたい本がすぐに手に入り、「あなたへのおすすめ」も示してくれます。しかし、本屋には、実際に本を手に取りながら選ぶ楽しみや、意外な本を見つけられる喜びがあるでしょう。
この頃は、効率や便利さの追求が加速し、その引きかえに失っていることがあると感じます。

不便から得る益

先日、「不便益」についての講演を聴く機会がありました。
「不便益」は、「不・便益」ではなく「不便の益」、つまり「不便であるからこそ得られる益」のことです。京都大学の川上浩司教授が、「不便益」の中の効用や豊かさに注目し、価値を見出そうと、提唱しています。
冒頭の、地図アプリを使わずに歩いたり、本屋をぶらぶらしたりすることによって、新しいお店や意外な本を見つけられるのは「不便益」の例です。

自動化による省エネ

省エネの分野では自動化が注目されており、今後の省エネを進める上でも不可欠とされています。ビルでは、温度、湿度、在室状況などによって空調の最適運転を図り、照明は人感センサーや照度センサーによって、必要な場所、時にだけ点灯します。家庭でも、人がいなくなると自動でふたを閉める暖房便座、床の材質によって自動で吸い込み力を変える掃除機などの省エネ家電が標準的になりつつあります。
「勝手にやってくれる」自動化は便利で効率的かもしれませんが、自分で気づく、考える、工夫をする機会がなくなっていくことに危機感を覚えます。

川上教授は、不便にする方法として、「アナログにせよ」「時間がかかるようにせよ」「操作数を多くせよ」「無秩序にせよ」「情報を減らせ」など12のポイントを挙げます。
便利・効率一辺倒ではなく、「不便益」な機器や仕組みをあえて作る、省エネにもこのような視点が必要だと感じます。

参考:「不便の効用をいかすシステムデザイン」川上浩司 他
https://www.slideshare.net/iilab/system-design-that-takes-advantage-of-inconvenience-hiroshi-kawakami

山川文子プロフィール

山川文子さんの写真

エナジーコンシャス 代表

執筆や講演を通じて、生活者視点での省エネ、環境に配慮した暮らしの情報を発信。
テレビ、新聞等のメディアでも広く活躍。

東京都地球温暖化防止活動推進センター(クール・ネット東京)顧問
一般財団法人省エネルギーセンター 上級技術専任職(国際業務担当)

[資格]
・消費生活アドバイザー(内閣総理大臣及び経済産業大臣認定)
・家電製品総合アドバイザー(一般財団法人家電製品協会認定)

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